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かかります。中程度の収入でしたら、賃金の30%が地方所得税として初めから賃金から引かれています。国への所得税は、納税者の14%程度にあたる高所得者が、最高25%収めるだけで、あとの人は一年に100クローネ(約1700円)納めればいいだけです。ですから八割強の国民は直接税としては所得の30%を納め、残りの高額所得者は55%納めるということです。消費税は、品目によって税率が違うんですが、食費が12%、新聞が6%、お酒などで最高25%となっています。そのかわり、観劇のチケットなど文化活動には消費税がかかりません。

 

日本女性は変わったか?

樋口 さて、訓覇さんが人生の本拠地をスウェーデンに移してから20年経つわけですが、この間、日本の家族の有り様、福祉も変わりました。外から見て、あるいは時々日本に帰っていらして、日本が現象としても意識としても変わったなと思われる点、また逆に変わらないと思われる点はどのようなところでしょうか。
訓覇 日本の女性は変わった思います。社会が変わっていくには、まず女性が変わることだというのはどこの国も同じだと思いますから、これはよいことだと思います。スウェーデンもそうでしたから。日本でも、子育てをしながら働いている女性が増えました。私の時代もシングルライフでやっていこうという女性はいたけれど、仕事も子育でも両方やろうという人が、近頃増えてきているように思います。例えば、私と同年代くらいの女性が、親の面倒も半分みて、ハーフタイムで働きたいという希望をもつと、今の日本では、ハーフタイムで働いているとホームヘルパーを派遣してもらえないなどの制約があります。半分は家族の世話をして、半分は働く。こういうことができたら女性としてはいちばんいいわけですが、こういった条件整備についても、女性が声を上げ始めました。意識が変わってきていると思います。
変わっていない点というと、老親が子供に面倒をみてもらうという伝統的スタイルが、現実としては無理になっているのに、幻想というか期待というか、根強く残っていることです。
例えば、日本から50代、60代の女性の方がスウェーデンに来て、「スウェーデン人はボランティアとか人のためのことを(無償で)せずに、公共でしてもらう。これで生きがいを感じるんでしょうか」と言ったことがあります。スウェーデン人は、自分を愛して自分の人生をよりよく生きて、初めて他人を愛し他人の立場に立ちきれると考えます。日本人だと、ともすると自分を捨て、ボランティアに生きがいを感じて、人生の生きがいを感じてという順になり、出発点が逆になります。これは家族についても同じで、家族のために自分を切り捨てるのではなくて、自分の大事なものを切り捨てずによい人生を送ることが、他人のよい人生を支えていく基本的な姿勢なんです。こういう点で、日本の女性が変わったといっても、まだ変わらない部分もあるなど思いました。
それと、日本の若い女性の中には驚くほど保守的な人もいて、お金持ちで学歴が高くてそういう男性と結婚してリードされるのが女の幸せであるとか、夫に表面的には従属しているけれど家計を握っていて夫を陰から操っている母親の姿をよしとする人がいます。こういう女性が嫁になったとき、姑になったとき従来からの嫁・姑の“あるべき姿”に左右される度合いは大きいのではないでしょうか。結局、親子関係にしても、夫婦関係にしても、「自立」の問題に帰結しますね。
樋口 そうですね。家族に依存した上で、なんとなく威張っているという「自立」だと、夫にしていた依存、息子にしていた依存が、今度は嫁に違った形で向けられるということになるのかもしれません。
訓覇 私は、多分親の面倒をみることは難しいし、私自身は子供に面倒をみてもらうつもりはありません。だから、私たちの世代が老後を迎える頃、一世代変われば、意識も多少変わるかもしれませんね。男の人はわかりませんが(笑)。
樋口 スウエーデンでは、男の人はどのように変わっていったのですか。
訓覇 かなり葛藤があったと思いますが、女性が外に働きに出ると、変わらざるをえなくなります。客観的条件が変わる中で男性も変わっていったんですが、男女平等社会における男性の役割が制度の中で決められていく段階では、悩んだと思います。夫の父親の世代は、息子のおむつは換えていない、孫で初めてという世代ですから。ちょうど、過渡期の男性なんです。ですから時間はかかると思いますが、日本も変わりつつあると思います。
ただ、私が日本の社会で思うのは、高齢者、障害者、子供などを含めたすべての人が同等の価値を持

 

 

 

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